4年2組 何が大切かを考えて 1-(2)思慮反省資料名「どっちにしようか」


本学習における知識創造

広の思考や思考の根拠について話し合うことによって 広や自分が行為の元としている様々な道徳的価値に気づき 思慮反省の大切さを深く自覚する営み 発展として 失敗したときこそよく考えるチャンスだ よく考えて行為をしていこうという思考や心情を育むことを含む





本学習の「よさ」

聴き合いや話し合いを通して、個々の子どもは、友達や自分が行為を決定するときには「よく考えて行動すること(思慮反省)」の他にも様々な道徳的価値が関わっていることに気づくと考えられる。「約束を守ること(規則の尊重)」「お母さんの言うことを聞くこと(尊敬感謝)」「家の仕事に協力すること(家庭愛)」「学級で協力すること(愛校心)」「友達のことを思いやること(思いやり)」などである。
多様な道徳的価値に触れておくことは、今後、これらの共通点を結びつけたり、優先性を考えたりして、より一般的な道徳的価値、例えば、「相手に迷惑をかけないようにすること」「自分がされて嫌なことは相手にしないこと」を生み出すことにつながると考えられる。
また、自分や友達が大切にしている道徳的価値を知り、自分や友達に対する理解を深めることが、本学習における学び方のよさであると考えている。





「よさ」の共有のための手だて

ア 可視化
展開前半で、まず、広を中心とする人間関係やそれぞれの心情について図式化して板書し、状況について全体的なイメージをもたせる。この手だてによって、「お母さんとの約束を守る(規則の尊重、尊敬感謝など)」か「試合を続ける(愛校心、思いやりなど)」か―どちらの行為を選択すればよいか、広が迷っていることがはっきりする。また、どちらの行為も、欲求や良心によって動機付けられていることに気づくことができると考える。
つぎに、「迷っている広さんは、どうしたらよいと思うか」、つまり、「お母さんとの約束を守る」べきか「試合を続ける」べきか、心のカードを用いて割合で表すようにさせる。二者択一ではなく割合で表すことによって、どちらの行為も否定せず、自分がより善いと判断する行為を選ぶことができる。
そして、割合の多い行為について、その行為を選んだ理由を書く活動を取り入れることによって、広の欲求や良心について考えを明らかにさせる。「お母さんとの約束を守る」べきだと判断した場合には「約束を守りたい(規則の尊重)」「お母さんの言うことを聞かなくては(尊敬感謝)」などの欲求や良心が理由として挙げられると考えられる。一方、「試合を続ける」べきだと判断した場合には「学級みんなで協力して試合をしたい(愛校心)」「自分が試合をやめれば、友達が困る(思いやり)」などが挙げられるだろう。欲求や良心は、括弧書きにした道徳的価値によって方向付けられていると考えられる。
展開後半では、「自分が行動するときに大切にしたいことは何か」について、書く活動を取り入れることによって、自分の行為を見つめさせ、「よく考えて行動することが大切であること(思慮反省)」という道徳的価値を自分との関わりで理解させるようにしたい。書く活動と、それを聴き合う活動によって、導入時と比べ、思慮反省の大切さを理解していることに気づくと考えている。
さらに、板書でも、思慮反省という道徳的価値の自覚が深まったことに気づかせるため、導入で子どもが話した「よく考えて行動すること」の経験を書き残しておき、終末の書く活動の内容と比べさせる。初めは、よく考えた「行動」に目を向けていたが、最後には「よく考えること」の大切さが理解できたことに気づかせたい。

イ 「かかわり」
本資料は、子どもの日常体験にありがちな行為を描いている。また、広が「お母さんとの約束を守る」べきか「試合を続ける」べきか考えさせ、子どもたちが様々な道徳的価値に気づかせることができる。
「迷っている広さんは、どうしたらよいと思うか」について、班で聴き合いをする。自他の意見を知り人間理解につながるように、聴き合いの前に「聴き合いの目的は、お互いの考えをよく知り認め合うこと」「班で考えをまとめる必要はなく、相手と向き合って話をよく聴き、わからないことがあれば確認すること」を伝える。聴き合いをふまえることで、話し合いで自信をもって意見を出せるようにする。
話し合いでは、「お母さんとの約束を守る」べきか「試合を続ける」べきか、その理由に注目させるようにする。例えば、「お母さんの言うことは聞かなくてはならないから」という理由は、広の良心、つまり、お母さんへの尊敬の表れであり、お母さんへの尊敬は、お世話になっている人への尊敬という道徳的価値に基づくと考えられる。理由に含まれる多様な道徳的価値に気づくことは、今後、より一般的な道徳的価値を生む知識となる。また、友達の意見を聴き、自分との同異を知ることは、友達や自分を理解することにつながると考えられる。
そのうえで、状況を図式化した板書を用いて、広が困っている状況に再び意識を向けさせ、広の軽率な行為に気づかせる。「お母さんと約束したのだから、慎重に行為をしよう」という欲求・良心を持ち続けることができれば、困っている状況にはならなかったはずである。つまり、よく考えて行為をするという道徳的価値を重視していなかったことになる。このことを、子どもが筋道立てて説明することは難しいと考えられるため、子どもの意見を確認したり補足したりして、「よく考えて行動すること」が大切だと理解できるようにする。

ウ 実践的な自覚へのデザイン
授業者の経験を聞かせることによって、よく考えて行為をすることに関心を向けるようにする。さらに、広の困っている状況を可視化することによって、子どもが課題をつかむことができるようにする。
授業後は、「大事なことをよく考えて行動する」ことについて掲示し、「よく考えることって大事なんだな」「失敗したときこそ、その後よく考えて行動しよう」という話題に触れるきっかけとする。
本学級では、子どもの成長や善い行いを、学期のふりかえり(『かしわっ子の成長』)に書き添えて、子どもと保護者に伝えている。学期末に近いことから、学期のふりかえりのメッセージや、個人懇談を通して、「よく考えて行動する」善さを保護者にも伝え、「よく考えて行動しよう」とする子どもを家庭とともに見守っていく。




※ 学習指導案 ダウンロード


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