1の2&ほし組 幼小連携授業「どきどき わくわく 〇〇あそび」

 19日(土)教育研究発表会2日目は、附属幼稚園の「保育を語る会」と同時開催でした。今年度も1年生と年長児との幼小連携の授業を公開しました。

 本単元「どきどき わくわく 〇〇あそび ~ほしぐみさんと いっしょに~」の第一次では、年度当初から交流を続けている交流グループのメンバーで、ペットボトルや発砲スチロールなどの廃材を使って船をつくりました。「ほしぐみさんといっしょに じょうぶで こわれなくて しずまないふねをつくろう!」と大きな目標を掲げ、6つのグループに分かれて取り組んだ船づくり。最初は、なかなか自分の思いを伝えることができず、グループの仲間と協力して活動することができませんでした。
「ほし組さんが遊んでしまって、話を聞いてくれない!」
「1年生がふざけてしまったから、だめなんじゃないの?」
「〇〇ちゃんがつまらなさそうな顔をしてる。」
・・・・・
 ほし組さんの様子を全く気にかけることなく1年生のみで話し合いを進めてしまったり、ほし組さんの行動を身勝手だと一方的に捉えてしまったり、せっかくつくった船もバラバラになって壊れてしまったり…と、悪戦苦闘しながらの船づくりでした。しかし、うまくいったこと、困ったことを話し合い、解決策をみんなと一緒に考える中で、子どもたちは相手意識を強くもち、船づくりに没頭していきました。
 2回目の船をプールに浮かべる場面では、どのグループも大成功!一生懸命につくった船に大満足でした。



 そして、第二次の秋のお店づくりでは、子どもたちの方から「またほし組さんと一緒にやりたい!」「だって、みんなとやる方が楽しいもん!」との声があがってきました。そこで、すかさず「でも、ほし組さんと船づくりして、大変なこといっぱいあったでしょ?じゃあ、1年生だけでつくればいいんじゃないの?」と問い返しました。すると、「大変だったけど、でも一緒にやりたい!その方が、1年生だけよりも絶対楽しいもん!」と返ってきました。
 第一次の船づくりの活動を通して、相手意識が確実に強まっていること、一緒に活動する楽しさや達成感を感じていることを見取ることができました。



手だて(1)思考と表現をくり返す場の設定
 秋のお店づくりでは、「どきどき わくわく みんなが楽しめる あきいっぱいまつりをしよう!」という単元全体の大きな目的を共有し、活動を展開していきました。
 前時では、実際にお店をオープンさせ、「あきいっぱいまつり」をしました。そこで、目的にもなっている「みんなが楽しめる」お店になっているかどうかを、お店屋さん・お客さんに分かれてチェックしました。お店屋さんは、ピンク色の付箋に「うまくいったこと」、水色の付箋に「うまくいかなかったところ」を書きました。お客さんは、黄色の付箋に「楽しかったこと」、黄緑色の付箋に「楽しくなかったところ」を書きました。そして、それをそれぞれのお店の紙に貼ることで、「みんなが楽しめる」お店になっているかを話し合いました。ピンク色や黄色の付箋が多いということは、楽しんでいる人が多いということ、水色や黄緑色の付箋が多いということは、楽しんでいない人が多いということです。
 4色の付箋で貼り表したことは、視覚的にも分かりやすく、子どもたちはすぐさま「どうやったら水色や黄緑色の付箋がなくなるだろう?」と考え始めました。そして、本時の「お店がもっと楽しくなるようにパワーアップさせたい!」という「こだわり」につながっていきました。
 参観者の方々からも、「『何してるの?』と尋ねたところ『お店をパワーアップさせているの。だって~』とすぐに返答があり、子どもが目的意識をもって活動することができていた」というご意見をいただきました。



手だて(2)伝え合い交流する場の工夫
 第二次では、第一次の活動を受け、交流グループではなく、自分のつくりたいものをつくることとし、自由グループでの活動にしました。第一次で培った力を生かし、第二次ではどのような思いを巡らしながら活動するのかを見取りたいと考えたからです。どんなお店にしようか、ほし組さんと一緒に話し合った結果、全部で12このお店ができました。1年生だけのお店、ほし組だけのお店もあります。「ほし組さんだけで大丈夫かな?」「でも、やりたいお店をなくすのはかわいそう。」「困っていたら助けてあげたらいいんじゃないかな?」…いろいろな思いを抱きながら、お店づくりがスタートしました。
 ほし組だけのお店「どんぐりごまやさん」のAちゃんは、「どんぐりごまがうまく回らないんだけど、どうしたらいいの?」と勇気を振り絞って1年生に聞きにきました。
 1年生だけのお店「パチンコやさん」のBくんは、「1年生しかおらんし、ほし組さんでもできるかどうか知りたいから、ちょっとやってみて!」と、隣のお店のほし組さんにお願いし、試しに遊んでもらっていました。
 1年生とほし組が混ざったお店「どんぐりめいろやさん」では、ほし組のCくん・Dくんが何をしていいのかわからず、つまらなさそうにダンボールカッターでざくざくざくざく迷路を切っていました。同じグループの1年生のEくんは、その様子を見ながら、「やめなよ!」と声をかけますが、全く聞き入れてもらえず、「まぁしょうがないか」とその様子を見守っていました。そこに、同じグループの1年生Fくんが来て、「わぁ!地獄の迷路になったなぁ!」と声をかけると、ほし組のCくん・Dくんは、とってもうれしそうに目を輝かせながら「こうやって落とすんだよ!」と自慢げに話します。その後、ほし組のCくん・Dくんは集中してお店づくりに取り組むことができました。
 第二次では、子どもの思いを第一にグループ編成を行ったことで、子どもは意欲的に活動し、さらに「1年生だけ」「ほし組だけ」といったお店もあったことで、お互いの意識も高めながら活動することができたと思います。参観者の方々からも「去年の連携授業とはどう違うのかが楽しみで参観しに来たが、グループ分けが子どもたちのやりたいようにできていてうれしかった。自然にかかわれる雰囲気がよかった。」というご意見をいただきました。
 一方で、共同研究者の先生からは「お店づくりのグループを自由に変わるチャンスをもっと明確に与えてはどうか」、「『グループを変わることは自由だが、自分勝手な行動はまわりに理解されない』という世の中の厳しさを知るチャンスと捉え、自己決定したことに対し、一生懸命にやり通す力を育てることも大切なのではないか」というご指摘もいただきました。グループを固定化するつもりはありませんでしたが、グループの名簿などの掲示物から子どもたちに「グループは変わってはいけない」という印象与えてしまったのかもしれません。そういった学習環境による影響、明確な声かけについてもさらに追究していく必要を感じました。


手だて(3)目的を意識させたふりかえり

 本時では、活動後のふりかえりの時間において、自分の満足度を3段階(ピンク・黄色・水色)で自己評価しました。また、お店ごとにシールを貼ることで、同じグループの仲間の様子を知ることができるようにしました。1年生は今までもこのようなふりかえりを続けてきましたが、ほし組さんにもシールを貼ってもらうことは初めてでした。
 3色のシールが貼られたお店のメンバー表を見ながら、ほし組さんと一緒に話し合いました。「どうして『まとあてやさん』は、みんなピンク色のシールなの?」という疑問をもった1年生のGちゃん。「なんでそこが気になったの?」と問い返しました。すると、「わたしもみんなピンクにしたいから。」とみんなピンク色のシールを貼った『まとあてやさん』に憧れを抱いている様子でした。また、「どうして『ストラックしゃてきやさん』は、みんな水色のシールなの?」と、今度はみんな水色のシールを貼ったお店の様子が、さらに「『どんぐりがっせん』のお店は、1年生は2人とも水色で、ほし組さんはピンク色なのはどうして?」と1年生とほし組さんで評価の異なるお店の様子が気になり始めました。
 3色のシールで貼り表すということは、子どもたちにとっても大変わかりやすく、また一覧表にして示すことで自分のお店だけでなく、広い視野をもち考えることにつながりました。
 その後、1年生のみでふりかえりの続きをしました。ほし組さんとのふりかえりを受けて、さらに考えます。Hくんが「全部ピンクにしたい!」とつぶやきました。すかさず「え?みんなはお店をパワーアップしたいんじゃないの?ピンク色(活動の満足度)と関係あるの?」と尋ねました。すると、「ちがう!みんながピンク色じゃないと、安心して楽しめない!」という答えが返ってきました。
 子どもたちの本時のねらいは「お店をパワーアップさせること」でした。その中で教師がねらっていたことは、「相手意識をもって活動すること」でした。この場面は、本時のねらいにぐっと近付くことができた瞬間だったと思います。
 参観者の方々からは、「ふりかえりの場面は、今までの活動とは違い、しーんとして空気が変わった。一人一人が考えた場面だった。」「他のグループのことも気にかけていた。」とのご意見をいただきました。


 
 今年の教育研究発表会、保育を語る会を通して、たくさんの方々からご意見をいただき、さまざまな視点で子どもの姿を見取ることができました。グループ編成の仕方、お店の並べ方、仕切りの有無、シールの準備等々、「もっとこうしたら…こうなったかも」という視点をたくさんいただきました。その中でも、やはり教師の声かけが、子どもにとっていかに影響力のあるものかということを実感しました。それは、「かかわり」をねらいとした授業だったことも大きかったのかもしれません。
 教師がそれぞれの個やグループで見取ったことをどのように認め、価値付けていくのか。さらに、そのうちのどれを全体に広めるのか。いずれの場合においても、教師の見取りによるかかわり方一つで、子どもの思考はかわってくるということを感じました。教師の見取りがその後の教師のかかわり方に影響するだけでなく、そのさらに後の子どもの思考にまで影響を与えるということを踏まえ、これからも実践を積み重ねていきたいと思います。

 たくさんのご参加、本当にありがとうございました。