なぜ今、「考える子」なのか?
みなさんは、学力って何だと思われますか?
これまでに学んできた知識の量で表せるものでしょうか?
子どもに限らず私たち大人も、困難に直面したとき、学力が高い人の方が困難を乗り越えられる、という文脈で考えるなら、学力とは、学ぶ力と何度でも挑戦する力と言えるのではないでしょうか。この場合、学ぶ力とは、「情報を使いこなせる知識に変える力」、つまり「考える力」と言えそうです。
また、昨年6月に閣議決定された第2期教育振興基本計画では、社会の方向性として「自立・協働・創造」が掲げられました。これら3つの理念を実現させる学力にも、考える力はなくてはならないものだと言えそうです。
私たちは学力を、これまで学んできた量ではなく、これからどれだけ学べるかという可能性だと考えます。それには、ものごとをどれだけ自分と関係付けて考えられるか、おもしろいと思えるか ということが大きく関わってきます。この意味で、考える子を育むことは自ら学ぶ子を育てることにつながります。
目標に掲げたものの、果たして考えることは教えられるのでしょうか?
「もっとよく考えなさい!」と叱れば、子どもは考えるようになるのでしょうか?
文科省の澤井陽介教科調査官は、このように言っています。
教える内容を通して「育てる」ことになる。
(「文部科学省教科調査官が語る「思考力・表現力」 徹底解説!」
『Vプレス12月号』 光文書院 2012)
皆さんは、どうやって子どもに考える力をつけておられますか?
教える内容を通して育てる。具体的には、私たち現場の教師が、自分たちで考え、実践していくしかないのです。
私たちはこれまで、何を教えるか、どのように教えるかばかり研究してきたのではないでしょうか。言ってみれば、教師側からのアプローチだったのです。私たちは、子どもがどう学ぶのかを踏まえたうえで、教師に何ができるのか、何をなすべきなのか研究していくことにしました。
この視点から、前年度までの研究を振り返ると、それまでは自己主張の強かった子どもたちが、友達の意見を受容的に聞けるようになりました。今年度からは、一歩先に進めて、聞き取った考えを受けて、主体的に自分の考えを深めたり拡げたりできる子どもを目指します。そうすることが、学ぶ力を育むことになると考えたからです。