3年1組 社会科「わたしたちの住む地域のりんご作り」 5~8時間目



【Uさんの りんご園見学】

11/1(木)
朝から土砂降りであった。
全校朝礼の後、出発。
雨の中だったが、安全を考えて、間隔を開けずに上手に歩いている。
本校は台地の上にあるので、急な坂を下って犀川の方へ降りていく。
河川敷で、小さなりんご園を見つけた子らが、「先生、ここか!」と嬉しそう。
「まだや。」と、答えつつ川を渡って、反対の台地へと坂を上っていく。
「先生、あとどれくらい?」という質問には、「今日は、その質問しない。」と応じる。
まだか、まだか、あとどれくらいか・・・で、子どもの頭を一杯にしたくない。
雨の中、長時間歩かせてはいけないと、小休止しながら、少し速いペースで歩いていたが、子どもたちはかなり元気だ。
さて、いよいよ見えてきた。
黙って、周りを観察しながら歩いていれば、子どもは自分たちでUさんのりんご畑をちゃんと見つけることができる。
あとどれくらいだとか、ここだよ、着いた、なんて言わない方が良い。
言わないと、「これは(りんご園にしては)小さすぎるから違う。」とか、「あれは、たくさんあるけど柿の実だから違う。」、なんて互いに考えながら歩くようになる。
りんご園は、学校と川を挟んで対岸の、河岸段丘の中腹にある。
りんご畑と平行して、辰巳用水が流れている。
山の栄養がいっぱい含まれた、美しい水の用水である。
左が用水、右がりんご畑。
用水からりんご畑の方へは、雨も手伝って、豊かな水が音を立てて流れていっている。
歩きながら、辰巳用水が、豊かで美しい山間部から引かれいてることを紹介した。
すると、
「このきれいな水を、引いているからUさんのりんごはおいしいんだ。」、「そうか!」と、子どもたちは、各々に語り合いながら、学習を開始だ。
その時であった。

「あっ!!C1の言ったとおりやった!!」

と、1人が叫んだのである。
あまりに大きな声だったので、私も含めて、思わずクラス中の子が、「なんだ?!」と、振り向いた。

「袋かけてある!」
「えーっ、どこ?!」
「あっ、ほんとや!」
「おおー!」

クラスのみんなが、2時間前の学習を思い出した瞬間であった。
C1は、一人で「りんごには、ふくろがかけてあった。」と言ったが、多くの子は「そんなめんどくさいことしているはずがない。」と、なっていた場面であった。(2時間目参照)
みんなが感心した表情で、C1君を見返している。
「すごい。君の言ったとおりだったね。」と、言うかのように・・・。
まだ、到着していないのに、Uさんに会ってもいないし質問もしていないのに、疑問が一つ解消した。(実は取り忘れの袋だった)
私は、ただ、「百聞は一見にしかずとはこのことだね。見学ってすごいね。」とだけコメントした。
が、忘れかけていた疑問が、まさか、見学先に到着するまでもなく、一瞬で解決してしまうとは・・・。
私は、子どもの観察眼の鋭さと純粋な探究心の素晴らしさに鳥肌が立ち、感動していた。
子どもたちは、数日も前に討論していた問題を、ちゃんと憶えていて、解決したのだった。

雨で、予定を約30分も遅れた私たちを、Uさんは用水の横まで出てきて待っていてくださった。
しかも、笑顔で迎えてくださった。
よく来たと、みんなに「秋星」(石川で生まれた新種のりんご)を、1個ずつもがせて、お土産にとくださった。
子どもたちは、歓声を上げて喜んだ。
一斉に、ガッツポーズである。
こうして、見学、りんご狩り、質問タイム、作業の実演、を終了し、学校へもどった。
雨の中、半日かかった見学であったが、子どもたちの目は輝きを増していて見えた。
もちろん、とてもおいしそうなりんごをもらったからということもあるが、
「すごい。」
「そんなんで終わるのか?」
という反応を示しながら―。

…これだから、社会科は、おもしろい。