複式国語 創作民話を読み合いました
研究発表会でご参観いただいた単元も、終末を迎えました。
どの子の作品も個性にあふれ、組み立てと仕組みに創意工夫のある民話ができました。
お互いの作品を読み合い、付箋にコメントを書く姿がとても微笑ましかったのでご紹介します。
今日に至るこれまでの歩みをふり返ります。
子どもたちと一緒に、学習計画を立てました。
子どもたちと一緒に、「三年とうげ」の組み立てと仕組みについて読み取りました。
質問にうまく答えられず、泣き出す場面もありましたが…
なかなかの傑作がそろいました。
一部ですが、ご紹介します。
正太郎とうそ次郎 Y男(3年)
むかしむかし、こんな言い伝えがありました。それは、八幡神社には死をつかさどる神が祭ってあるというのです。
あるところに、正直な若者正太郎と、正直でない若者うそ次郎が、隣の家に住んでいました。どちらもお母さんと二人暮らしでした。
あるとき、正太郎のお母さんが今、村ではやっている病になってしまいました。
「母さん、母さん。」
正太郎が何度呼んでも、言葉を返してくれません。
そこで正太郎は、貧乏だったけど、家で一番高級な米でおにぎりを二つつくりました。それを持って、八幡神社へ行きました。そして、おにぎりをそなえて、
「お願いです。どうか母の病を治す薬をください。」
正太郎は願い続けました。
そして、正太郎が家に帰ると、玄関に病を治す薬が置いてありました。
薬を飲んだお母さんは、とても元気になりました。
すると、それを聞きつけた隣のうそ次郎は、
「へっへっへっ。じゃあ、おれはその薬を売って、お金もうけをしよう。」
と思いました。
そこでうそ次郎は、おにぎりではもったいないので、どろだんごをにぎって、八幡神社へ向かいました。そして、どろだんごをそなえて、
「どうかぼくの母の病を治す薬をください。」
そう神様にうそを言い、気分よく家に帰りました。
帰る途中、うそ次郎は、足をすべらせて気ぜつしてしまいました。その時、こんなゆめを見ました。
それは、いきなり目の前に大きなかがみが出てきて、そこには、うそ次郎のお母さんが、
「しっかりしんしゃい。しっかりしんしゃい。」
と、泣きながらうそ次郎にうったえている姿がうつっていました。
うそ次郎は、目に涙をいっぱい浮かべて、
「ぼくが、人や神様にうそをつくと、お母さんはこんなに悲しむのか…」
と、反省しました。
その時、「はっ。」と、正次郎が目をさましました。
それからは、うそ次郎は人にも自分にもうそをつくことなく、しっかりはたらいてお金をかせぎ、村人からは正次郎と呼ばれ、お母さんと幸せにくらしました。
めでたし、めでたし。
金色の実 U子(4年)
とんとむかし。
あるところに、おばあさんと一人の若いむすこがおったそうな。どういうわけか、むすこの名前は決めてなかった。
むすこは、顔はみにくかったけど、寝たきりのおばあさんの世話もするし、まじめに働く心やさしいしっかり者だった。
ある日、そのむすこが山へ木を切りにいった。すると、木の隣に捨てられた子犬を見つけた。心やさしいむすこのことだから、名前のないのはかわいそうだと、子犬に「ココ」と名づけて持ち帰り、たいそうかわいがった。
一人で寝たきりのおばあさんも、さびしかったのでやっぱりかわいがった。
ココは、むすこに特になついて、どこへ行くときにもついていった。毎日、こんなもんだから、ココとむすこはすっかり仲良しになった。
ところが、ある日、ココは病気になってしまった。むすこもおばあさんも、つきっきりで看病したが、治らなくて、とうとう死んでしまった。二人はとても悲しんだ。
ココがなくなって、まだそんなに日もたっていない夜、むすこはココの夢を見た。夢の中でココは、
「畑の真ん中に、小さな木を植えてください。そしたら、私も天国で幸せにくらせます。」
と言った。
むすこは、次の朝、起きるとすぐ、言われたとおりの場所に木を植えた。
すると、木は一年もたたないうちに、むすこの身長をこえ、家の屋根をこえて大きくなった。
ある日、むすこがぼんやりした感じで畑を見ていると…。
木には金、銀の実と葉っぱがたくさんなっていた。それはココが、むすこに親切にされたお礼として実らせたものだった。しかも、その実や葉っぱは、食べると病気が治るまほうの実だった。長生きできるこうかもあった。
その実のおかげで、むすことおばあさんは、長生きができた。そして、いつまでもココのことを忘れないよう、ココロという名前をむすこの名前にしたそうな。
めでたし、めでたし。
足の速い男の子 N男(4年)
とんとむかし。
ある村に、とても足の速い男の子がいました。
ある日夕方、とうげの急な坂道を、おばあちゃんが隣村まで、病気の孫のためのお薬を、息をはぁはぁ言わせながら運んでいました。
隣村では、
「まだかな。まだかな。」
と、首を長くして、おばあちゃんの運んでくるお薬を待っていました。その薬が明日の朝までに届かないと、赤ちゃんの命が助からないかもしれないのです。
そのお薬は、おばあちゃんの住んでいる村にしか生えていない薬草で、おばあちゃんにしか作れないお薬だったのです。
そのお薬をおかゆにまぜて食べると、命が助かると言われています。
あの男の子が、いつものようにとうげを走っていると、おばあちゃんが、息をはぁはぁ言わせながら、よろよろ歩いてきました。
それを見た男の子は、おばあちゃんに、
「だいじょうぶですか? 少し休んだらどうですか。」
と、心配して声をかけました。
すると、おばあちゃんは、
「はぁはぁ、あたしゃあ、はぁはぁ、休んでなんか、はぁはぁ、おれないんじゃわ。隣村の、はぁはぁ、まごが、はぁはぁ、病気で、はぁ、急いで、はぁ、この薬を、はぁはぁ、明日の朝までに、はぁはぁ、届けないと、はぁぁ。」
と、やっとやっと言いました。
男の子は、
「それだったら、おらが隣村まで届けてあげるよ。」
と言って、薬を受け取ると、とうげの急な坂道をものすごい速さでかけていき
ました。一度も休むことなく、朝までに薬を届けることができました。
隣村では「助かった! 助かった!」と大喜びです。三日後にようやく村に
たどり着いたおばあちゃんから、すっかり話を聞いた村人たちは、男の子が赤
ちゃんの命を救ってくれたと感謝しました。
それからたくさんの月日がたちました。なんと、この男の子は、村で病気を
治す、足の速いお医者さんになっていたそうです。とっぴんぱらりの、ぷう。
ウォリスとウォリム A男(3年)
むかし、ウォリスとウォリムという男の子がいました。ウォリスが兄でウォリムが弟です。
ある日、二人はお父さんに言われました。
「この家に、むかしから伝わっている家宝のつるぎを、二人にあげたいと思う。だけどこのつるぎは、やさしい人にしかあげられないから、いつもけんかばかりしているお前たちには、あげたくてもあげることができない。」
ウォリスとウォリムは、見たこともないそのつるぎが、ほしくてほしくてた
まらなくなりました。だから、どうしたらやさしい人になれるか、考えました。ウォリスは言いました。
「お手伝いをいっぱいしたらいいんじゃない?」
ウォリムは言いました。
「ちがう、ちがう。お母さんのごはんをいっぱい食べたら、やさしくなれるんだよ!」
二人は、いろいろ話し合いましたが、そうこうしているうちに、またけんかが始まってしまいました。
なんとかおさまったころ、二人は気付きました。
「お父さんが、言ってたね。けんかをしていたら、つるぎはあげられないって。」
「なんで、けんかになっちゃったんだろう?」
二人は、思いました。お互いに自分たちのしたことや話したことをふり返って、考えました。ウォリムは言いました。
「ぼく、自分のことしか考えてなかった。自分の言いたいことが全部正しいと思って、ウォリスの言うことを全然聞いてなかった。」
ウォリスも言いました。
「ぼくも、同じだよ。」
お互いに反省しました。
「ちゃんと相手の気持ちを考えて、話をしたり聞いたりしていれば、けんかにならなかったかもしれないね。」
ウォリスもウォリムも同じことを思いました。
そして、お父さんのところへ行き、二人で考えたことを言いました。お父さ
んはにこにこ笑ってほめてくれました。そして、二人に、一本ずつつるぎをわ
たしてくれました。
めでたし、めでたし。
きつねのようかい S男(4年)
これは、本当にあった話らしい。
寺町の村に義太郎という、勇気はあるが少しあわて者の男がおったとさ。
そのころ寺町の村では、町へ行く時に通る神社に、きつねのようかいが現れるといううわさじゃった。
そこで義太郎は、勇気をふりしぼって、ようかいたいじに出かけたそうな。
義太郎は、神社に入り、
「おーい、きつねの化け物、こっちゃ来い!」
とさけんだ。
すると、向こうから一人の若者が寄ってきて、
「道にまよったもんで、町の行き方、教えてくださいな。」
と言ったと。
義太郎は、心の中で、
「こいつは、化け物にちがいねえ。町までおびきよせて、ふくろだたきにしてやるべし。そうすれば、おいら、この村で有名になれるべ。」
そう思い、
「兄さん、おいらが町まで連れて行ってやるべ。」
義太郎は、しめしめと思い、歩き始めたとさ。
そして、町に着くと、
「おーい、みんな。こやつが、ようかいぎつねだぞ。みんなで、ふくろだたきにするんじゃ!」
町の人みんなで、ぼこぼこ、ばたばたばた、ぎったん、ぎったん、ぎったんにしてやったとさ。
ところが、その若者は、本当の人間様じゃったそうな。
義太郎は、何度も何度も若者にあやまり、町中の人からは、笑い者として有名になったとさ。
これにこりて、義太郎は、そんな早とちりをやめたとさ。
すってんけらけら、ぺーのぺー。