複式音楽 合奏「宝島」

 複式音楽 合奏「宝島」でめざした学ぶ楽しさは「曲のイメージや曲想にふさわしい表現を工夫して 思いや意図をもってみんなで合奏する楽しさ」である。
「学ぶ楽しさを味わう授業」への3つの手だてについて考察する。

手だて(1)感動やあこがれを感じさせる音楽との出合い
 T-SQUAREの「宝島」はわくわくするようなネーミング、軽快なリズム、明るい曲調等魅力ある楽曲であった。さらにどのパートも主旋律を担当できる合奏の構成は子どもの意欲につながっていった。授業者がこの楽曲を通して、子どもに音楽的などんな力をつけさせたかったのか、子どもの既習や実態を考えることも必要であった。
 また子どもに「こんな演奏をしたい!」というゴールのイメージを持たせるためにいくつかの映像を見せた。めあてとした「自分たちも見ている人も楽しくなるような にぎやかな合奏」に近づくために有効な手だてとなった。

手だて(2)互いの思いを伝え合い 表現を交流させる
 本題材では自分達の合奏を録音等で聴き、不足を出し合い自分たちで合奏を作り上げていく過程を大切にしたいと考えた。そのために合奏における自分たちの役割りに着目し、スコアで全体の動きを見ながら話し合わせた。メロディー(主旋律)のつながり、メロディーを引きたてるオブリガード、演奏をにぎやかにする合いの手、リズムなど自分や友だちがどの部分でどんな役割りをしているのか、そのために自分はどんな演奏をすればよいのかを考えることができた。また、パート分けで3,4年生を組み合わせたことで教え合ったり協力して練習したりする姿が見られた。

手だて(3)成長が自覚できる場を設け 変容を認識させる
 自分たちの演奏をふり返り、不足を出し合えるようパート毎の演奏を聴き合うことや録音と録画で確認する場を多く設定した。演奏しながらではわからないテンポの揺れ、メロディーのつながりの不十分さ、突っ立ったままの演奏の姿や無表情など不足をみつけ、自分たちにできることを考え、さらにいい表現につなげることができた。
 しかし、どんな不足を見つけさせたいのかという授業者の視点が必要だったと思う。今回は速さやパフォーマンスが中心になってしまったが、強弱やメロディーと他のパートとのバランスなどの視点を与えることが、より子どもの考える姿につながっていったように思う。

 合奏「宝島」を通して「みんなで合わせる楽しさ」「みんなで目指した合奏のめあてを達成できたと感じる楽しさ」「合奏を通して一体感を感じる楽しさ」「友だちに教えてあげる楽しさ」「最初はできなかった自分の役割りを、最後には成し遂げた楽しさ」を味わったとふり返りに書いている。しかし、それは考えた結果生まれた楽しさだったのか?
 授業者の工夫で、子どもたちがもっと考える場面を設定できたのではないかと思う。考える場面、考える質を意識した授業の積み重ねの大切さを実感した題材であった。