2年国語 たんぽぽのちえ
4月に研究授業を行った「たんぽぽのちえ」をふりかえります。
本単元でめざす「学ぶ楽しさ」は,
『順序や理由を表す言葉に着目しながら たんぽぽなどのいろいろな生き物のちえを読み取ったり紹介したりするとともに それをきっかけにいろいろな本と出合い 自分の読書生活を豊かにしていく楽しさ』
です。単元を通して子どもが「学ぶ楽しさ」を味わうための手だてについて考察します。
⑴「鳥のちえ」※1→「たんぽぽのちえ」という単元構成とした手だてについて
本時で,「じくがのびるのは,種をあちらこちらにちらして仲間をふやすためだ。」という意見が出た時に,Aさんや他の子どもから「鳥のちえにもどります。」という発言がありました。教師はこの発言をとりあげなかったのですが,Aさんたちが何を言いたいのかはわかりました。やまがらのちえを学習した時に,子ども達は「木の実をかくす」ことだけがやまがらのちえではなく,「一個ずつべつべつにかくす」ことが一番のちえだと言っていました。まとめてかくすと,その場所に何かあった時や,他の鳥や動物に見つかった時に,木の実が全部なくなってしまうからだという理由です。たんぽぽも,ただわた毛を飛ばすのではなく,「とおくまで」「あちらこちらに」飛ばすために,じくがのびるのであり,そのちえは,「仲間を増やす」ことにつながっていると言いたかったのです。
①は,「鳥のちえ」を学習することで,「ちえ」をより具体的にとらえるための手だてだったのですが,子ども達は教師の思いを超えて,「鳥のちえ」と「たんぽぽのちえ」を比較し,その共通点を見つけていました。その結果,「とおくまで」「あちらこちら」という言葉に着目し,「背伸びをする」というちえと,「仲間を増やす」というちえを働かせる目的を結び付けて考えることができました。子どもが考えたぴったりの名前にも「とおくまでとばす」「なかまをふやす」という言葉を使っているものがたくさんありました。
※1「鳥のちえ」は,教科書にはない関連教材(説明文教材)です
⑵読み取ったちえにぴったりの名前を考えて交流した手だてについて
ちえにぴったりの名前を考えることは,「鳥のちえで」3回(からす・ささごい・やまがら),「たんぽぽのちえ」で3回(ぐったりしたたんぽぽ・じくをのばすたんぽぽ・わた毛をとばすたんぽぽ)行いました。合計6回繰り返したのですが,6回目になっても子どもから「やったぁ。」の声があがりました。なぜ,意欲を継続させながら取り組めたのでしょうか。
その理由として,子どもが「考えたことを交流し,再思考することができる」手だてであったからだと考えます。子どもの様子を見ると,自分でぴったりの名前を考えて書くことと同じくらい,友達の考えた名前を見ることを楽しみにしているようでした。また,再思考の後,今一番ぴったりだと思う名前に手を挙げてもらった時,自分の考えた名前に,何人もの手が挙がっていると,とってもうれしそうな表情をしていました。
『ぼくは,みんなのたんぽぽの名前をつくるのがうまいなとおもいました。どうしてかというと,「なかまをふやすためにぐったりしてたねにえいようをおくるたんぽぽ」は、長いけれどよくわかるからすごいなとおもいました。あと「ぐったりしてたねにえいようをおくるよたんぽぽ」や,「おもいやりたんぽぽ」もいいとおもいました。でも,やっぱり自分の「ぐったりしてえいようをおくるよたんぽぽ」がいいとおもいました。でも,一ばん人ずうがおおかったのは,「たねのためにえいようをおくるよたんぽぽ」だったのでくやしかったです。』
ぐったりたおれたたんぽぽのちえを考える授業を終えた,Kさんのふりかえりです。Kさんは,友達の考えた名前を「うまいな」と思いながら再思考した結果,「やっぱり」自分の考えた名前が一番いいという結論に達しています。
このように,名前を考え,交流し,再思考する過程で,子どもの名前のつけ方がだんだん上手になっていきます。一番最初にカラスのちえを考えた時は,「かんがえるからす」「あたまのいいちえからす」など,抽象的な名前が少なからず見られました。それが,6回目になると,「雨の日にはとばしたくないたんぽぽ」や「晴れの日だけとばせたんぽぽ」,「ひらく,しぼむ,わた毛たんぽぽ」のように,ちえを自分の言葉で工夫して表すようになってきました。Kさんは,単元を終えてのふりかえりに,『たのしかったことは,名まえをかくことでした。さいしょはあんまりいいやつではなかったけれど,人のやつを見てどんどんうまくなりました。』と書いています。交流し,再思考することで考える力がついていることは,本人にも自覚されていました。