6年理科「燃焼の仕組み」2

 前時までに子どもは,物が燃え続けるためには空気が絶えず入れ替わることが必要であることを学習している。その結果をもとに,本時ではビーカーで蓋をして空気の流れのない中で,長さの異なる2本のろうそくを燃やして,その様子を観察した。空気が入れ替わらなければ,ろうそくの長さが異なっていても同時に消えると予想するか,二酸化炭素は空気より重いという知識があれば短いろうそくが先に消えると予想すると思われる。しかし,この実験では長いろうそくの方から火が消えていく。この知識と結果のズレから,「物が燃え続けるためには,空気が絶えず入れ替わることの他に何か要因があるのでは?」という問いをもつと考えた。その問いから,これから追究する課題を「決める」ことを本時でねらうこととした。
 授業では,授業前に予想していた「短いろうそくが先に消える」や「同時に消える」と答える子どもがほとんどおらず,長いろうそくが先に消えると予想する子どもがほとんどだった。詳しい理由は本時では聞いていないが,おそらく前時の「ろうそくを燃やすと空気の流れが下から上へできる。」ことから予想したものだと考えられる。確かにこの予想も間違いではないのだが,本時の現象と前時の現象は異なる条件のものであること,(例えば,空気の流れがないという点やろうそくの長さが2本異なっている点など)を確認しておくとまた違った予想がでたかもしれない。本時では,予想と結果のズレから違和感を生むことが,追究課題を「決める」へつながる一つと考えていたので,その点では今回の予想の考えのもたせ方は改善の余地がある。
 実験を何度もくりかえす中で,子どもはろうそくの燃焼時間に着目して,自分達で時間をはかったり,現象を今までの既習や知識をもとに説明し合ったりする姿が見られた。それらをもとに,なぜ長い方が先に消えたのかを自分なりの根拠をもとに説明してもらった。以下は子ども達の発言である。

・燃える空気が入らなくなって,上に燃えない空気が上にのぼって,先に消える
・あまりきれいじゃない空気が上にたまっていって,だから(長いろうそくは)早く消えて,
 きれいな空気は下にたくさんあるので(短いろうそくは)長持ちする
・1回使っちゃった空気なので,それが長いほうのろうそくを消して,そこから出た空気が
 たまっていって,小さいほうのろうそくも空気が使えなくなって,消える。
・使われた空気は新しい空気が減ってしまい,長い方が古い空気にふれやすくて,
 短いほうは,まだ新しい空気に触れやすい

 おそらく同じような空気の流れや空気の質の変化を説明しているのだが,使う言葉はさまざまであった。燃える空気と燃えない空気,きれいな空気ときれいじゃない空気,使った空気,新しい空気と古い空気など。子どもはこれらを同じ空気の流れや質の変化と捉えているのか,別のことと捉えているのか,この認識がズレているとこれから先の追究課題も異なってくるだろう。そこで,説明したことの共通点を見つけ,追究課題を「決める」ことへつなげようとした。共通点を考えさせたことで,みんなの考えていることは,「ビーカーの中の空気が質的に変化したのではないか?」ということであることが,納得できたと考える。


単元を通した「決める」としては,
「ろうそくのほのおをを燃やし続けるには?」という課題のもと,
「燃え続けるには空気の流れが必要」
  ↓
「空気の流れが必要なのは,物が燃えると気体が変化するからでは?」
  ↓
「物を燃やすはたらきがあるのは酸素で,燃えると二酸化炭素が発生する」
というように,ろうそくの燃焼という事象の提示から子どもが追究課題を決めて活動することができた。
理科における問題解決型学習において「決める」授業をデザインするには,

追究課題を「決める」→ 自分の考えや予想を「決める」→検証方法を「決める」

の流れを意識することで子どもが自分事として課題を捉え,見通しをもって学習を進めることができ,よりよく「決める」ことができるのではないかと,今回の実践を通してつかむことができた。
今回の単元では,そのために事象の提示の仕方や子どもの思考に沿った実験器具の準備など重点1に関わる手立てが有効であった。

今後の課題としては,授業の後半

検証 → 考察 → まとめ → 次の課題

という流れの中での「決める」の位置づけである。
今回の単元では,燃焼前後の空気中の気体の割合の変化を調べたデータをどのように判断するか「決める」ことが授業の収束や次の課題へつながると感じた。これらのデータの処理が科学的な思考へとつながる部分であると考えられる。今回は各班が調べたデータをどちらかというと教師主導でまとめ,考察へとつなげた。ここでのデータの検証をするために重点2の手立てをうつことが必要であろう。そのことで,子どもがより科学的な思考へと変容し,次の課題を生み,さらなる追究意欲へとつながっていくと考える。