副題 「学ぶ楽しさを味わう授業」

副題 学ぶ楽しさを味わう授業

 次に,副題についてご説明します。3年次の副題は,「学ぶ楽しさを味わう授業」です。2年次から引き続いての副題となります。

⑴「学ぶ楽しさを味わう授業」とは
 「学ぶ楽しさを味わう授業」とは,「問い」や「こだわり」をもって考え,課題を解決する学習活動を通して,自分の考えが深まり広がる授業です。
 「なぜだろう。どうすれば解決できるのだろう。」という「問い」や,「もっと~したい。もっとできるようになりたい。」という「こだわり」をもった「自分の学び」には,子どもに学ぶ意味や必然性が生じます。「問い」や「こだわり」をもって学ぶ過程で,子どもが学習活動に没頭し,「学ぶ楽しさ」を味わうことが「考える子を育む」ことの原動力になります。 
 「学ぶ楽しさ」を味わうことで「考える」ことが楽しくなり,もっと考えたくなっていきます。もっと「考える」ようになるから,「学ぶ楽しさ」がさらに味わえるようになります。「楽しいから考える」のであり「考えるから楽しくなる」のです。
 本校の子どもに味わわせたい「学ぶ楽しさ」は,次の3つです。

① 本質に気付いていく中で得られる楽しさ
② 相互の考えの深まりやよさを認め合う中で得られる楽しさ
③ 自分の成長を認識していく中で得られる楽しさ


⑵「見取り」から「学ぶ楽しさ」へ
 2年次の成果を踏まえ,3年次の研究では,「学ぶ楽しさ」を味わう子どもの姿が学びの中でどのように表出されているのか,「学ぶ楽しさ」を味わう子どもの姿は教師のどのような働きかけとかかわりがあるのかを,より明らかにしたいと考えました。
 そこで,「学ぶ楽しさ」を味わう子どもの姿に、より着目しながら研究を進めていくこととしました。学びの中で表出された子どもの姿をもとに,子どもがどのような思いや考え,「問い」や「こだわり」をもち,どのような「学ぶ楽しさ」を味わいながら学んでいたのかを見取っていきたいと考えたからです。さらに,見取りから得た教師の省察を次の学びへと生かしていくことで,より子どもの姿に即した「学ぶ楽しさを味わう授業」をつくっていくことができると考えたからです。
 「見取る」とは,授業中の子どもの発言,つぶやき,表情,行動,ノートなどに表れる言動から,具体的な子どもの学びの姿をとらえることです。さらに,具体的な子どもの言動をもとに,その奥にある子どもの思いや考え,「問い」や「こだわり」,子どもがどのような「学ぶ楽しさ」を味わっているのかを解釈することです。
 子どもの姿の見取りは,子どもが「学ぶ楽しさ」を味わうために,様々な形で生かしていきます。子どもの日々の学習や既習事項の見取りは,授業前に,子どもに味わわせたい「学ぶ楽しさ」を想定することや,「学ぶ楽しさ」を味わうための単元構成や手だてを設定することに生かしていきます。また,授業中に,子どもの姿を見取ることで,子どもの学びが「学ぶ楽しさ」へと向かうに,教師が適切に働きかけていくことができます。さらに,授業後のふりかえりや,授業記録などからの見取りをもとに,教師が自らの働きかけと「学ぶ楽しさ」を味わう子どもの姿とかかわりを省察をすることで,その後の,授業づくりへと生かすこともできます。
 しかし,授業者一人で,子ども一人一人の言動をすべて把握するのは難しいことです。そのため,教師が相互に授業を見合いながら,子どもの姿を見取り,語り,学び合っていくことを大切にしていきたいと考えます。授業者,参観者がそれぞれの立場で相互の見取りを語り合い,共有していくことで,それぞれの見取りや,見取りからの気付きは,より幅が広がるとともに質も高まっていきます。子どもの学びを支える教師として,子どもの姿から学び,教師同士が相互に学び合いながら,「学ぶ楽しさを味わう授業」をつくっていきたいと考えます。
 研究発表会では,各授業で,子どもが「学ぶ楽しさ」を味わう姿を共に見取っていただき,共に学び合いたいと思います。研究発表会への参加をお待ちしています。


研究主題 「考える子を育む」

研究主題 「考える子を育む」

 研究発表会まで、あと2週間となりました。発表会に向け、本年度の研究概要についてご説明します。始めに、研究主題「考える子を育む」についてです。本研究主題は平成26年度からの3年次の研究主題であり,今年度が最終年度となります。

⑴なぜ「考える子」か
 「2011年に小学校に入学した子どもたちの65%は,大学卒業後,今は存在していない職業に就くであろう」。文部科学省から出された「論点整理」にも引用されているこの文にもあるように,これからの社会は,先を見通すことがますます難しくなってきています。そのような社会を見据え,私達が育てていきたいと考える子どもは,「自立して学ぶ子ども,教師や大人から教えられたことにとどまらず,教えられたこと以上に主体的に学ぶ子ども」です。学校社会を巣立った後も,先を見通すことの難しい社会に対応し,主体的に社会に関わっていく人になってほしいと考えるからです。
 グローバル化や情報化が進展するこれからの社会で子どもに必要なことは,多様な情報の中から,必要な情報を吟味・選択し,目的に応じて活用できることです。そのために必要なことが「考える」ことです。社会の変化に受け身で対処するのではなく,主体的に向き合って関わり合うこと。解き方が定まっていない問題に対し,自ら問いを立ててその解決を目指すこと。他者と協働しながら新たな価値を生み出していくこと。そのすべてに必要とされるのが「考える」ことです。「考える子」とは,新たに得た情報や知識を既有の知識と関係付けて思考・判断・表現することができる子であると言えます。

⑵「考える子」とは
 2年次までの研究実践から,「考える」には次のような側面があることが明らかになりました。

① 対象を多角的な視点からとらえ直すこと
② 対象をさまざまな関係の中に位置付けること
③ 明確になっていないことについて はっきりしていることをもとに推論すること
④ 自らの考えを表出し 自分自身にフィードバックし 深めたり広げたりすること
⑤ 個別事象の解決から学んだことを さまざまな場で用いること


 これらの側面をもとに,本校では「考える子」を次のように定義しました。

○多角的な視点からさまざまな関係の中で対象をとらえ直し,見えていないことまでも推論する子
○自分の考えを他者と分かち合い,深めたり広げたりする子
○学んだことや学び方を自覚し,さまざまな場で用いる子

 
 研究発表会では,各教科等の授業を通して,上記のような「考える子」の姿を提案いたします。

⑶「考える子を育む」には
 子どもは,「わからないことを解決したい。」という,子ども自身の思いから生じる必然性によって,より深く考えます。そのため,子どもの学びを,誰かから与えられただけの「他人事の学び」から,子ども自身が「考えたい」という思いをもった「自分の学び」へとしていく必要があります。
 また,「育む」という言葉には,教師が子どもに意図的に働きかけることだけではなく,子どもの育ちを「支えながら待つ,見守る」ことも大切にしたいという,思いや姿勢が込められています。子どもが学びの中で「解決したい」と思うことや,解決するために考えた方法は,教師のねらいや意図に収まらない場合もあるかもしれません。また,解決の方向が違っていたり,解決することにつまずいてしまったりする場合もあるかもしれません。そのような場合でも,子どもの思いや考えを大切にし,子どもが自分の力で解決することを教師が支援していくことで,主体的に「考える子」が育まれていくと考えます。