副題「決める授業をデザインする」

副題「決める授業をデザインする」
 次に,副題についてご説明します。2年次の副題は,「決める授業をデザインする」です。1年次からの引き続いての副題となります。

⑴「決める授業をデザインする」とは
 1年次の研究により,子どもが「決めたこと」を分類・整理してみると,「決める」を手段や方法として認識していたが,子どもが「決めたこと」が本校の主題にかかわってくる「未来を志向する力」,そのものであり,子どもにとって求められている今必要な資質・能力との関連性が見えてきた。資質・能力とは新学習指導要領において述べられている,生きて働く「知識・技能」の習得,未知なる状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成,学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養のことです。「よりよい未来を志向する力」を新学習指導要領における3つの資質・能力の関係図に位置付けると以下の図のように見えてきました。



 また,1年次の研究から各教科等によって,「未来を志向する子」の未来とは,いつのことを指すのか,そのとらえ方に差があることがわかってきました。今から明日へとつながる近い未来と捉えたり,今からさらに先の遠い未来のことを設定したりする教科が見られました。
これらの1年次の成果と課題を踏まえ,2年次の研究では,1年次で明らかになってきた「未来を志向する力」を単元や授業の中に取り入れていき,また,1年次の「よりよい未来を志向する力」の他にも新たに「よりよい未来を志向する力」と言えるものがあれば,その資質・能力を単元や授業の中に取り入れていくこととする。「よりよい未来を志向する力」を「よりよい未来を志向する子どもの姿」としてとらえ,このことを本校では「授業をデザインする」と定義しています。

⑵決める授業をデザインするための重点
 決める授業をデザインするために以下の3点を設定し,以下の重点を意識しながら実践を 
重ねる。
①学びへの原動力を形成する「決める」
 子どもが学びへの原動力を形成するには,子ども自身が「知りたい」「やってみたい」という思いや考えをもち,学ぶ必要感や目的意識をもつことからはじまります。単元や授業の導入の過程などにおいて,子どもが学ぶ必要感や目的意識をもつことで,子どもが自ら学ぶ意義を知り,その思いや考えを単元や授業を通して学習し続けていこうとする力となっていきます。子どもが自らの学びへとつなげる意欲や意識をもたせるような授業を工夫していく必要があります。
②多様な視点から根拠をもって判断する「決める」
 子どもが根拠をもって判断するには,生活経験や既習してきたことを想起させ,根拠をもって自分の考えをもつ必要があります。また,視点を明らかにしたり,視点を広げたりするには,他者とのかかわりが必要になってきます。他者とのかかわりから多様な考えに触れることで,子どもはもう一度課題を見直したり,既習で得た知識や情報を整理したり,新たに必要な情報を求めたりします。つまり,自分の思いや考えをもう一度とらえ直す機会が生まれ,自分の思いや考えを前よりも確かなものにしたり,更新したりすることができます。
③今までの学びをふり返り,未来に役立てる「決める」
 単元や授業の中で,自己を省察することで,「わかった」「できるようになった」という満足感や達成感を味わい,「次はできるようになりたい」「次はこうしたい」という向上心や理想像をもつことへつながります。また,学んできたことを土台にして子どもがその学びを実践していくことで,その学びを実感することができます。学びが何に生かされているか,どんな力へと結び付いているのかを感じさせることで,学びの深まりや広がりを見出し,子どもは次の学びへとさらに向かうことができます。

⑶検証方法
 各教科等において,1年次の「決める」の側面で見えてきた「よりよい未来を志向する力」をもとにしながら,単元の流れや授業の中で未来を志向する子どもの姿と位置づけ,「決める授業をデザインするための重点」をもとにしながら授業をデザインします。
また,そのためには,教師は単元や授業の中でどのような働きかけが有効だったのか,その他にも有効な手だては何なのかを単元や授業を通して考え検証していきます。
さらには,実践によって子どもに未来を志向する子の姿が見られたのか,子どもの姿をもとに検証しまうす。授業で見られた子どもの姿を分析し,各教科等においてめざす子どもの姿や各教科等の特質に応じた「よりよい未来を志向する子」を追求していきます。

 研究発表会では,各授業で,本時の手だて(決める授業デザイン)は,子どもがよりよく決めるために有効であったのか,ご覧になられた授業では,よりよい未来を志向する子を育むことにつながると感じたのかについて子どもの姿をともに見取っていただき,ともに学び合いたいと思っています。研究発表会への参加をお待ちしております。


研究主題 「よりよい未来を志向する子の育成」

研究主題「よりよい未来を志向する子の育成」
 研究発表会まで,あと10日となりました。発表会に向け,本年度の研究概要についてご説明します。
 はじめに,研究主題「よりよい未来を志向する子の育成」についてです。本研究主題は平成29年度からの2年次の研究主題となります。

⑴ なぜ「よりよい未来を志向する子」か
 私たちが育てていきたいと考える子どもは,主体的に学んでいこうとする子どもであり,これから先の未来を切り拓いていける子どもです。自ら進んで学ぶことができる子どもは学校社会から巣立ってからも,変化の激しい現代社会を生きぬき,社会の中においてもたくましく,学び続ける人となっていくと考えるからです。
様々な方法で情報を獲得することができる今,その多様な情報の中から,必要な情報を選択・判断し,目的に応じて活用できる力が必要となってきます。そのために必要なことが「よりよい未来を志向する」ことです。子どもが直面した課題や設定した目標をしっかりと把握して,その課題や目標に対して「自分がこうしたい」「こうなりたい」といった思いをもち,具体的にその姿をイメージし,今から未来永劫へと,仲間とともに試行錯誤をくり返して行動していくことです。

⑵ 「よりよい未来を志向する子」とは
 1年次までの研究実践から,「よりよい未来を志向する」には次のような姿があることが明らかになりました。
○教師が子どもにとっての必要感,子どもの願いや思い,単元終末時の子どもの姿などをより具体的にイメージして,単元や授業を考えることで,子どもが課題や目標に向かって学び続ける原動力へとつながりました。
○教師が新たな視点を与えたり,他とのかかわりの場を設定したりすることで,子どもはいくつもの事象から物事を多角的に見て判断していく姿や,友達と思いや考えを共有しながら自分の作品や検証方法,考え方を見直し,よりよくしようと試行錯誤する姿が見られた。また,自分の思いや考えだけにとらわれるのではなく,グループやチームやクラス全体のことを考え,その中でのよりよいものをつくり上げる姿も見られました。
○教師が日常生活の中にある場面を想起した問題を提示したり,生活場面をふり返ったり,子どもの疑問を引き出す事象を提示したりすることで,子どもは追究の必要感が生まれ,自分の思いや考えを具体的にしてもつことができました。

 本校では,これらの姿をもとに,「よりよい未来を志向する子」を次のように定義しました。
・学習に対する課題意識・目的意識をもち 学び続ける子
・友達と思いや考えを共有しながら 多様な視点から自らの思いや考えを更新する子
・今までの学びを実生活や実社会に広げ 自らの思いや考えを未来の自分へとつなげる子
た。

 研究発表会では,各教科の授業を通して,上記のような「未来を志向する子」の姿を提案いたします。

⑶「よりよい未来を志向する子の育成」とは
 子どもが「こうしたい」「こうなりたい」という,子ども自身の思いをもち,具体的にその姿をイメージし,今から未来永劫へと,仲間とともに試行錯誤をくり返して行動していく子に育んでいく必要があります。そのためには,子どもが「こんな自分になりたい」と未来の自分を想像する経験をくり返し行っていくことと,教師が「こんな力をつけたい」と未来の子ども像をもち続けることとが互いに関連し合うことによって,よりよい未来を志向する子が育まれると考えています。